kikuoopsのBlog

ワークキャピタルという会社をやってます。by 菊岡翔太

ストライプインターナショナル石川康晴さんのお話

先月からNewsPicksアカデミアに入っていたので、今日はアースミュージックアンドエコロジーで有名なストライプインターナショナルの石川康晴さんの講演会に行ってきました。

僕はファッションには興味はほとんどないのだけれど、、石川さんは以前からずっと話を聞きたいと思っていた方でした。ファッション企業の経営者というよりも、ライフスタイル企業の経営者という方がピッタリ。

23年前に岡山で洋服屋1店舗からスタートした事業は、国内1200店舗、海外200店舗に拡大。それだけではなくて、洋服のレンタルWebサービスをやったり、ホテルをオープン予定だったり、時代の流れを読んで事業をぐっと広げられている方。

こうした事業は一朝一夕に出来上がったものではないですが、経営者の大先輩として、今のいろいろな仕掛けをされている姿が率直に羨ましく、いつかは追い越せるように、もっと頭を使って頑張りたいと思いました。

実は今回の内容は小売業者向けの色が強かったのですが、ただ普遍的な部分も多くありましたので、忘れないうちにメモとして残そうと思います。

 

内容は大きく下記の3つ。

(1)ストライプ社の未来戦略

(2)ストライプ社の組織戦略

(3)小売の未来

 

それぞれ書いていきます。かなりの乱文ぷりですので先に謝っておきます。

(1)ストライプ社の未来戦略

特徴としては特定のセグメントに絞ることなく、F1層もF2層も、男性も女性も、子どもからヤングミセスまで、全てをとりにいっているということ。

2年前には子供服のECをM&Aし、今期は対象事業で100億円の売上見込。プラットフォームへと育てていくことが狙い。

さらっとプラットフォームと書きましたが、石川さんが考えているのは、スケールしていく事業とスケールを大きく望まない事業に分けて手を打っていること。スケールしていくものに関してはプラットフォームを狙いにいく、という戦略。

ただ単に売るのではなく、大切なのはそこのデータをとりにいくということ。データをとることで、今後の打ち手に繋がる。

特徴的なのはさらに、アースミュージックアンドエコロジーで、全ての年齢層をグリップしにいこうとしていること。アパレルの常識としては、年齢ごとにブランドを分けていくが、セオリーから外れて、一つのブランドで異なる年齢層を捉える。

そのためにも、イメージを打ち出す女優も分けて同じブランドを訴求している。
・10代は広瀬すず
・20〜30代は宮崎あおい
・40〜50代は鈴木京香

 

そして二つ目は、単なる洋服屋ではなく、考えているのは人が起きている間でのタッチポイントをいくつも増やし、ストライプでお金を落とす仕組みをつくれないかということ。

例えば、Youtubeを観ている人は一見ファッションと関係ないように思われるかもしれないが、そういう人たちも取り込みたいと思っている。映画の事業に投資をしたのも、エンターテイメント領域もとっていきたいという思いがあるからこそ。

 

ここからはちょっと脱線。

■撤退基準と投資基準

□撤退基準

新しい事業については、撤退する基準を決めておく。基本的には、2年目に3億円の赤字になった瞬間に撤退させる。

ただし事業内容によって撤退基準は異なり、ホテル事業の場合は50億円の赤字が撤退基準となる。

 

□投資基準

成長マーケットや自分たちの得意分野では、強気に投資していく。
新規事業の9割は石川さん自身が決めている。
失敗する可能性が高いものを部長、課長にまかせてしまうと、その社員もしんどくなる。

社長の仕事としては大きく下記の3つ。
M&A
・先行ブランドを壊す
・リブランディング
新規事業は社長自身が引っ張っていく。そこに成長させたい4〜5人を巻き込む。

 

■衰退産業に身を置くということ

斜陽産業には実は勝機がある。
 →テクノロジーの理解が弱い人たちが多いため、そこが狙い目である。

 

■中国について

テクノロジーの面で、中国は日本の遙か先を行っていることを認識したほうが良い。

特に、深センがあることで、シリコンバレーに行く必要がなくなったくらい。

ID(セキュリティ)で、ペイメントをするということのインパクト。ITの面では、確実に中国が世界一に向かっていることを実感。

オンラインペイメントにより信用を築いているため、最も正確な仕組みを構築している。

 

■リテールの役割

これまでのように「買う」という行為自体が体験にはならなくなっている。

ストライプでは「ニューリテール」という言葉で、リテールの存在意義を再定義している。

リテールの役割としては、ユーザーとのエンゲージメントを高めること。

熱狂度を上げることで、ECで購買してもらうようになる。リアルな店舗がそうしたファンを増やし、熱を高める存在となる。Apple Storeのような役割かもしれない。

 

(2)ストライプ社の組織戦略 ※箇条書きで。

・新しいものをやっていると、おもしろい人が集まる。
・全員がリーダーになりたいというわけでない。それぞれの強み、役割があることを認識し、チームを作る。どういうタイプの人を置くのかはすごく意識すべし。
・KPI、KGIを明確にする。プロジェクトマネージャーがきちんとウォッチして、やばい、やばくないということをきちんと言えることが大切。
プロマネがプレイヤーになってしまうことが多い。それは防ぎたい。

プロマネが出来る人をアサインするのがスタート。そしてプレイヤーで走り回れる人を2番手にする。
・新規事業の公募制度をつくっている。40本公募があって10本程度を採用。
初期200万、運転資金300万で、計500万程度でテストし、育たなければそれで終わる。
ただし、そういう人はきちんと昇格させている。
・石川さんとしては、組織の一部分しかみていない人よりも、全体をみた人の方が強いという確信がある。

・30代、40代でグループ会社の社長に抜擢させたい。
グループ会社を成長させた人が、インターナショナルのボードメンバーに戻ってくるのが理想。

・リーダーに向かない人:コミュニケーション能力が低い人。
関係の質が結果の質に繋がる。
困っていたら手をさしのべる、落ち込んでいる人がいたら食事に誘うなど。かなりウェットな部分を大切にしている。
新規事業で、人間関係でゴタゴタしているチームがうまくいくところをみたことがない。

・現在ストライプ社の54%が女性管理職。
・BtoBは男性が多くなるのは理解できるが、BtoCは男性と女性が半々となるべき。
・女性の社員を増やすには残業を減らすしかない。そのための改革が必要。元々は猛烈の社内文化だった。
もともとは24時以降もザラであったが、だんだんと変革し、今は月間平均残業時間は8時間。

0)24時以降まで仕事することが常態化していた。
1)22時までに帰ること・・・大号令を入れた。※比較的容易。次からは仕組みが必要。
2)21時・・・増員により対応
3)20時・・・テクノロジーを活用
4)18時・・・必要な仕事のみにフォーカスした。横軸に利益、縦軸に時間。マトリクスをつくる。計9個。利益が高く、時間が短いものを整理した。自分たちではプライドがあるので、上司がきちんと整理する。会議を50%カットした。


M&Aについて

M&Aをする上で大切にしていることは踏み絵をしないこと。自分たちのやり方に合わせない。決めつけない。

内部留保せずに、積極的にM&Aなどに使っていく。

M&Aは一緒に仲間になるという考え。どちらが上も下もない。
・日本の社会は、もっと大企業が積極的にM&Aして買っていくべき。ベンチャー経営者も次に事業を立ち上げるなどして、社会を変えることをどんどんやっていけば良い。

 

(3)小売の未来

・今後人の購買行動はどう変わっていくか?
女性は一度着たものを、もう一度インスタにアップしたくない。だからこそ、CtoCのメルカリのようなサービスが必要となり、GUのような低価格が時代にあっている。
女性は「数」がほしい一方、男性は長く使う。

・これから動画のECは増えていく。所有から共有の文化へ変わってきている。
10代は所有ではなく、貸してもらうというマインド。

 

■メチャカリ
・30億の投資を当初より予定。
7年でユーザー1万1000人で黒字になるところが、3年半で現在9000人まで順調に増えている。

 

■アパレル事業の今後
・BtoCの問題点:高速の配送がある。
全体の25%を2週間で作ることが目標。※ZARAは全体の20%が2週間。

ストライプの場合は、そこにデジタルマーケティングを入れることで、世の中に必要なものを効率よく、高速に作り、在庫リスクを減らせる仕組みにしたい。

 

■カスタムオーダーについて
効率は良いけれど、スケールしない。30億円がアッパーになってしまう。

消費者はできたものを見たいという気持ちが強い。

 

■今後について
・デジタルマーケティングが最も重要であり、データを「何につかいたいのか」ということが大切。
・過去データを分析して、予測ができる。
発注とデリバリーでAIを使うのは、だれもが考えている。ストライプはその精度を上げていく。

・それだけではなく、ストライプがやりたいこととしては、デザイナーをAIに落とし込むということ。過去データ、教師データ(パリコレ等の記事、画像などをクロールさせて取得)をミックスさせてAIに入れて、服のデザインまでAIで行う未来。5年程度は要する。


■経営フレームワーク
・役員にはMBA取得をすすめている。
・国際的なフレームワークが必要。フレームワークがある人と、感情の人とでは会話が噛み合わないことがあるため。
・国際的に経営していく上では必要だと感じている。
自己啓発しない社員にお金をかける必要はない。従業員にも正しい投資をしていきたい。

・芸術、文化を理解することは大切。想像力が膨らむ。ヨーロッパの人たちは一般の人でも教養が深い。

■これからの日本について
中国、イスラエルでデジタルの波がきている。日本は30周遅れのレベル。
日本人は限られた時間で最高のパフォーマンスができる人種と信じている。
そのためには、デジタルマーケティングをどうしていくかということが一番大事になっていく。