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ワークキャピタルという会社をやってます。by 菊岡翔太

ダボス会議でのジャック・マー対談内容(3/3)

今回がジャック・マーのダボス会議での対談最終回。

これからの教育のあるべき姿や、ビックデータの本当の価値、人をモチベートさせる方法など、ジャック・マーの考えるリーダー論が語られています。

それでは第三回、最終回をどうぞ! (動画は41:45から)

 

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■Q.(参加者): 教師としての経験は会社を経営するのにどう影響を与えましたか。また、教育の分野で働いている人へメッセージをいただけますか。

 

A.(ジャック・マー): まずひとつ言わせていただくと、私はCEOというものになりたいと思ったことは一度もなかった。

私は全てを教師のときの経験から学んでいる。

教師とは、常に自分の生徒が自分たちよりも良くなってほしいと思っているものである。

もしそうした気持ちがなかったら、それはひどい先生だ。

良い先生は生徒の成功を祈っている。

 

CEOとして私は、入社してくれた従業員がみなより良い人間へとなれるように自分自身を訓練してきた。

教師は、生徒よりもよく知っていなければならない。

だからこそ、教師は常に学び続けなければならない。

教師は、知っていることを共有しなければならない。

教師は、生徒が自分よりも良い存在になるように期待をしていくべきだ。

 

少しテーマは変わるが、教育は大きなチャレンジに直面している。

もし教育の仕組みを変えられなければ、私たちは30年後に大きな問題にぶつかるであろう。

 

この200年間教えてきたことは、全て知識をベースにしたものであった。

私たちは、生徒をコンピューターと競争させてはいけない。なぜならコンピューターは人間よりも賢いから。

私たちは、人間らしさを教えることが大切だ。なぜならそうしたことにはコンピューターは永久に追いつけないから。

そうすれば30年後に子どもたちはチャンスを掴むだろう。

 

大切なことは、Value(意義)、Believing(信念)、Independent thinking(自律的思考)、Teamwork(チームワーク)、Care for others(思いやり)であり、これらは知識ではない。

このようなソフトな面は、スポーツや音楽、アートから学ぶことができる。

これらは、決して機械ではできない。

 

 

■Q.(参加者): スキルを必要としない仕事が機械によって奪われ始めている。

あなたの会社ではどうやって、従業員が学び続ける仕組みを作っているか。また、テクノロジーはどう社会に必要とされるのか意見を聞かせてください。

 

A.(ジャック・マー): 幸運なことに私たちの会社では、意識的に従業員に学び続けようとさせる仕組みがなくとも、成り立っている。

なぜなら毎日、未来に向けて「戦って」いるから。もし私たちが正しく動かなければ、AmazonGoolgeFacebookなどにやられてしまう。

 

実際、全てがテクノロジーでの競争というわけではない。

アリババをスタートしたとき、18人中2.5人分しかエンジニアがいなかった。

今は25000人以上のエンジニアがいる。みな頭のいい人間であり、アリババをスタートした18年前よりも、もっとずっとスキルのある人達だ。

 

強調したいのは、これらの人たちは良い心をもっているということだ。

私たちは多くのデータを扱っており、もし良い心をもっていなければ、これは悲劇となる。

AmazonGoogleFacebookAlibabaは、今世紀で最も運の良い会社である。

運が良いということは、責任があるということである。

良いことをするためには、良い心をもっていなければならない。

 

独身の日を知っていますか? 

1111日の大きなセールイベントで、去年は1日で250億ドルの売上を記録した。

最初の1分で70008000万人がサイトにアクセスした。

だからこそ、システムは良いものでなければいけない。

1秒間に270,0000トランザクションを処理しなければならない。この大きさを想像できますか?(笑)

もしこれを対処できなければクラッシュする。

なぜこの日を生み出したのか。それは、私たちのテクノロジーをテストするためでもある。

 

中国では毎日1億個以上の小包が届けられている。

5年後、それが毎日10億個になる。

こうしたときに向けて、独身の日では私たちはテストをしているのだ。

 

 

 ■Q.(参加者): シュワブ教授は私たちが気候変動で影響を受ける最初の世代となるということを言われていた。

環境に関するマインドセット(考え)を教えていただけませんか。

 

A.(ジャック・マー): まず最初に言わせていただくと、全ての災害は今日の人間の心を反映している。

なぜなら、私たちは多くのことを欲しがりすぎており、そして多くのことを破壊している。

 

これまでの私たちは、より多くのものを欲しいと思う感情が先だった。

あんなものがほしい、こんなものがほしいということで、自分以外を見てきた。

自分を見ることをしてこなかった。もし人間の内側を見ようとしなければ、私たちは決して賢くはなれない。

賢くならなければ、何がほしいかではなく、何がほしくないかということが決してわからない。

 

今は、さまざまな環境問題が起こっている。なぜかというと、人々は貪欲になってきたからだ。

そうした中で、ビックデータが活躍する。

データテクノロジーは、人間の内側(心)を理解しようとすることである。

データとは、人間の行動の結果である。

機械はあなたのことを、あなた以上によく理解している。

 

環境に関して言えば、行動することが大切だ。

もし行動しなければ、何も良くなることはなく、稼いだお金は全て医療へいくことになる。

そうでなければ、私たちの子どもが困ることになる。

まずは私たちの心を正し、信念を正すこと。

Value(意義)があればもっと良くなる。

若い人たちは特に、ValueMission(使命)が必要であり、心のなかにBelief(信念)が必要である。

こうしたことが、これからの30年間の教育において大切となる。

 

 

■Q.(参加者): どうやって従業員をモチベートさせているのか? そしてどのくらい睡眠をとっているのか?(笑)

 

A.(ジャック・マー): まずはモチベートさせる前に、自分自身で考えて、動ける人を仲間に加えることが最初だ。

消極的な人をモチベートするのは決して簡単なことではない。

アリババには65000人の従業員がいるので、全てポジティブな人間を雇うことはできないが、少なくとも私が見られる範囲の人はそうしたポジティブな人である。

そうしたポジティブな人たちが、自分たちの部下を勇気づけるからだ。

部下を動かすことができない人は、決して副社長にはなれない。そうした人は良いデザイナーであるかもしれないし、良いエンジニアであるかもしれないが、決してリーダーではない。

そして、賢い人間というもはお金だけで働かせることはできない。そうした人をリスペクトし、信頼し、感謝すること。そして、心を込めたアドバイスをすること。

 

きっとみなさんは私たちの会社のミーティングにきたら驚くでしょう。

私たちは中国の一般の会社とは違う。上司だけが話して部下がメモをとるというものではない。

War Room「戦争部屋」と呼んでいる。(笑)

だれの声が一番大きいかで競い、全ての人が話す、非常に活気のあるものだ。

 

それと、どれくらいの睡眠をとるかという質問に関して。

私は、睡眠時間はすごく短いわけではないが、決して十分ではないと思うし、たくさん食べる人間でもない。そして食べ物の好き嫌いも多い。

もし1ヶ月の休みがあったら、私は逆に倒れてしまう。

最初私たちのミッションは18人のものだった。今は従業員が65000人になった。彼ら従業員は全員、アリババのビジョンを信じている。

もし私がビジョンを諦めたら、全員が崩れてしまう。

 

今、私はたくさんの時間を考えることに使っていて、考える事が大好きだ。

良いチームを持てて私は幸せだ。

私が考えたり、スピーチをしている間に、みなが働いてくれるからだ。(笑)